また、システム管理者にとっても大きなメリットがあります。社内の数百人、数千人のパソコンのOSアップデートや、セキュリティソフトのパターンファイルの更新、業務アプリケーションのインストールなどを1台ずつ手作業で行うのは非現実的です。VDI環境であれば、データセンターにあるマスターイメージ(基準となるOSの環境)を更新するだけで、全社員のデスクトップ環境に一斉に変更を反映させることができます。これにより、管理コストを劇的に削減しつつ、社内全体のセキュリティレベルを均一に保つことが可能になります。
一方で、VDIにはネットワークへの依存度が高いという弱点もあります。画面の描画やキー入力の反応をすべてネットワーク越しに行うため、通信環境が不安定だと画面がカクついたり、文字入力が遅れたりして、社員の業務効率が著しく低下します。また、サーバー側に数百人分のデスクトップ環境を同時に稼働させるための膨大なCPUやメモリリソース、そして高速なストレージ(オールフラッシュストレージなど)が必要となるため、導入における初期コスト(インフラの調達コスト)が高額になりがちです。
基本情報技術者試験において、VDIや「シンクライアント(Thin Client)」はセキュリティ対策や情報システム部門の運用管理の文脈で頻出のテーマです。試験では「クライアント側には最小限の処理能力しか持たせず、データやアプリケーションの実体はサーバ側で集中管理する仕組み」といった説明から、VDIやシンクライアントを選ばせる問題が定番です。
また、間違いやすい点として、VDIは「端末側にデータを残さないための仕組み」であるため、利用者の手元にある端末のスペック(CPUやメモリの性能)は、VDIの動作速度にほとんど影響を与えないという特徴をしっかり理解しておきましょう。動作の遅延やパフォーマンスの低下が発生した場合、その原因は端末側ではなく、ネットワークの帯域不足や、サーバー側のリソース不足(ストレージのI/Oボトルネックなど)にあるケースがほとんどです。
VDIを実現するための専用端末を「シンクライアント」と呼びます(Thin=薄い、軽いという意味)。対義語として、データを自身に保存し処理を行う通常のパソコンを「ファットクライアント(Fat Client)」と呼びます。また、VDI環境を構築するためにはサーバーの処理能力を分割する「仮想化」技術が不可欠であり、ハイパーバイザなどの基盤技術と深く関連しています。