最終確認日:2026年8月19日

冒頭文
ブラウザ分離(RBI:Remote Browser Isolation)は、WebサイトのHTMLやJavaScriptなどを利用者のPCではなく、クラウドや隔離環境にあるリモートブラウザで実行するセキュリティ技術です。
危険なWebサイトを開いてしまっても、悪意あるJavaScriptやブラウザ脆弱性を狙うコードを利用者端末へ直接実行させないことが目的です。
単純にWebサイトを「ブロックする」のではありません。
怪しいからブロックするではなく、
怪しいので、
PCから離れた安全な場所で開くという考え方です。
CISAはWebブラウザ保護のガイドで、Remote Browser IsolationはWebデータの処理をローカル端末から安全な仮想環境やクラウド上の隔離環境へ移す技術だと説明しています。2025年のフィッシング対策ガイダンスでも、悪意あるリンクやバイナリからマルウェアが組織内へ広がることを防ぐ対策としてRBIを挙げています。
結論・要点
RBIの核心は、「Webサイトを信用してから開く」のではなく、「信用できなくても端末から隔離した場所で開く」ことです。
通常のブラウジングでは、
インターネット
↓
自分のブラウザ
↓
JavaScript実行
ファイル処理
ブラウザ脆弱性
↓
自分のPCとなります。
RBIでは、
インターネット
↓
リモートブラウザ
↓
HTML / JavaScriptを実行
↓
安全な描画結果だけ転送
↓
自分のブラウザという構造になります。
NISTのデータ機密性保護リファレンスでも、Browser Isolationは悪意あるWebコンテンツやインターネットから取得した実行ファイルを隔離し、エンドポイントへマルウェアが広がるリスクを抑える技術として扱われています。
ただし、RBIは万能ではありません。
認証情報フィッシング、セッション窃取、情報漏えい、SaaSの不正操作などは、RBIだけでは防げない場合があります。
そのため、
RBI
+
DNS / SWG
+
DLP
+
EDR
+
MFA
+
ID管理として使うことが重要です。
この記事の要点
RBIは、Webサイトのコードを利用者PCではなく隔離されたリモートブラウザで実行するセキュリティ技術です。
RBIでは、悪意あるJavaScriptやブラウザ脆弱性への攻撃を利用者端末から物理的・論理的に遠ざけられます。
RBIは、危険なWebサイトを単純にブロックするのではなく、隔離環境で安全に閲覧させる考え方です。
RBIは、未知のWebサイト、新規ドメイン、フィッシングリンク、広告経由の攻撃への防御に有効です。
RBIでは、コピー、貼り付け、ファイルアップロード、ダウンロード、印刷、キーボード入力を制御できる製品があります。
RBIだけでは、利用者自身が偽ログイン画面へパスワードを入力する認証情報フィッシングを完全には防げません。
RBIは、SWG、DNSフィルタリング、DLP、EDR、MFAなどと組み合わせて利用することが重要です。
RBIは、VDIやVPNとは異なり、主にWebブラウザの実行環境だけをリモートへ隔離します。
RBIは、すべてのWeb通信を隔離するより、高リスク通信を動的に隔離する設計が実用的です。
RBI導入時は、表示遅延、WebGL、WebAuthn、ファイル転送、SSOなどの互換性を事前検証する必要があります。
この記事で分かること
この記事では、次の内容を説明します。
- RBIの基本的な仕組み
- 通常のブラウザとの違い
- マルウェアを防げる理由
- フィッシングに対する効果
- Pixel StreamingとVector Rendering
- RBIとTLSインスペクションの関係
- RBIとSWG・VDI・VPN・EDRの違い
- ファイル・クリップボード・DLP制御
- RBIでは防げない攻撃
- 導入対象の決め方
- 動作確認方法
- 運用上の問題
- 2026年時点で注意すべきMicrosoft Application Guardの扱い
- Zero Trust環境でのRBIの位置付け
対象読者・前提環境
この記事は、次の読者を想定しています。
- セキュリティ担当者
- インフラエンジニア
- SOC・CSIRT担当者
- 情報システム担当者
- Zero TrustやSASEを検討している企業
- フィッシング対策を強化したい企業
- SaaS利用時の情報漏えいを防ぎたい企業
- ブラウザ経由のゼロデイ攻撃を減らしたい企業
- TLSインスペクション、SWG、DLP、EDRとの違いを知りたい人
特定のRBI製品だけを対象にはしていません。
ただし、具体例については2026年時点のCloudflare Browser Isolation、Zscaler、Microsoft、CISA、NISTの一次情報を使用しています。
用語と全体像
RBIとは
RBIは、
Remote Browser Isolation
の略です。
日本語では、
- リモートブラウザ分離
- ブラウザ分離
- Web Isolation
- Browser Isolation
などと呼ばれます。
「危険かもしれない荷物を自宅で開封せず、別の検査施設で開ける」と考えると分かりやすくなります。
Webサイトの場合は、
HTML
CSS
JavaScript
WebAssembly
画像
動画
PDF
Webアプリなどをリモート側で処理します。
CloudflareのRBIでは、JavaScriptなどのアクティブコンテンツを利用者端末ではなく隔離されたブラウザ上で実行します。
通常のWebアクセスとRBIの違い
通常のブラウザ
@startuml
title 通常のWebブラウジング
actor "利用者" as User
rectangle "利用者PC" {
rectangle "ローカルブラウザ" as Browser
}
cloud "インターネット" {
rectangle "Webサイト" as Web
}
User --> Browser : URLを開く
Browser --> Web : HTTPSリクエスト
Web --> Browser : HTML / JavaScript / File
Browser -> Browser : JavaScript実行\nHTML解析\nファイル処理
note right of Browser
悪意あるコードも
利用者PC上のブラウザへ届く
end note
@enduml通常のブラウザでは、Webサイトから受け取ったコンテンツをローカルPCで処理します。
ブラウザに脆弱性が存在した場合、悪意あるWebサイトからブラウザやOSを攻撃される可能性があります。
RBIを使ったWebアクセス
@startuml
title Remote Browser Isolation
actor "利用者" as User
rectangle "利用者PC" {
rectangle "ローカルブラウザ" as Local
}
rectangle "RBIクラウド / 隔離環境" {
rectangle "リモートブラウザ" as Remote
}
cloud "インターネット" {
rectangle "Webサイト" as Web
}
User --> Local : URL・マウス・キーボード
Local --> Remote : 操作情報
Remote --> Web : HTTPSリクエスト
Web --> Remote : HTML / CSS\nJavaScript / File
Remote -> Remote : HTML解析\nJavaScript実行\n危険コンテンツ処理
Remote --> Local : 描画結果
note bottom of Remote
悪意あるコードは
隔離環境で実行
end note
note bottom of Local
利用者端末には
必要な表示結果だけを転送
end note
@endumlここがRBI最大の違いです。
Webサイト
↓
ユーザーPCではなく、
Webサイト
↓
隔離ブラウザ
↓
表示結果
↓
ユーザーPCになります。
CISAも、Remote Browser IsolationはWebデータ処理をローカル端末から安全な仮想・クラウド環境へ移す方式と説明しています。
RBIで何が起きているのか
利用者が次のURLを開いたとします。
https://example.com/RBI環境では概ね次の処理になります。
① 利用者がURLを入力
↓
② RBIへアクセス要求
↓
③ RBI上のブラウザがexample.comへ接続
↓
④ HTMLを取得
↓
⑤ JavaScriptをRBI上で実行
↓
⑥ ページをRBI上でレンダリング
↓
⑦ 描画結果を利用者ブラウザへ転送
↓
⑧ マウス・キーボード操作をRBIへ返送利用者は普通のブラウザを操作しているように見えます。
しかし、実際にWebサイトを開いているブラウザはクラウド側にあります。
RBIは「リモートデスクトップ」と同じではない
見た目は似ていますが、目的が違います。
| 技術 | リモート側へ移すもの | 主な目的 |
|---|---|---|
| RBI | ブラウザ | Web攻撃の隔離 |
| VDI | デスクトップ全体 | 業務環境の仮想化 |
| RDP | Windowsデスクトップ | 遠隔操作 |
| VPN | ネットワーク通信 | 安全なネットワーク接続 |
| SWG | Web通信 | URL・通信内容の検査 |
| EDR | エンドポイント監視 | 攻撃検出・対応 |
RBIは、
OS全部をリモート化するのではなく、
危険性の高いブラウザ実行部分だけリモート化する設計です。
RBIはどのように画面を送っているのか
すべてのRBI製品が同じ方式ではありません。
代表的には、
Pixel Streamingと、
描画命令を転送する方式があります。
Pixel Streaming
リモートブラウザで描画した画面を、画像や映像のように利用者へ送ります。
Webページ
↓
リモートブラウザ
↓
レンダリング
↓
Pixels
↓
利用者ブラウザZscalerの公式ドキュメントでは、リモートブラウザでページを読み込み、レンダリング結果をPixel Streamとして利用者のブラウザへ送信する方式が説明されています。
長所
- ローカルへWebコードを持ち込みにくい
- JavaScriptを端末で実行しなくてよい
- 隔離境界が分かりやすい
短所
- 帯域を使いやすい
- 動画や高速スクロールで遅延しやすい
- 高解像度表示の負荷が大きい
Network Vector Rendering
別の方法として、画像そのものではなく、
ここに文字を描く
ここに線を描く
ここに画像を配置するという描画命令を送る方法があります。
Cloudflareはこれを**Network Vector Rendering(NVR)**と呼んでいます。
Webサイト
↓
Cloudflare Remote Browser
↓
JavaScript実行
↓
描画命令へ変換
↓
利用者ブラウザ
↓
画面表示Cloudflareは、ページ全体を動画として送るのではなく、軽量な描画命令を利用者ブラウザへ送る方式を採用しています。2026年にはHTML5 Canvas向けのCanvas Remotingも追加され、2D Canvasについて描画命令をクライアント側へ転送できるようになっています。
ただし、WebGLやWebGPUなどへの対応には制限があります。これはRBIそのものの普遍的な制約ではなく、製品やレンダリング方式によって異なります。
問題・仕組み・原因
なぜRBIが必要なのか
ブラウザは非常に大きな攻撃面を持っています。
Webサイトを表示するだけでも、
HTML Parser
CSS Engine
JavaScript Engine
WebAssembly
画像Decoder
動画Codec
PDF Viewer
WebGL
WebRTC
ブラウザ拡張
Cookie
Storage
Authenticationなど、多くの機能が動作します。
攻撃者から見ると、
悪意あるWebサイトを開かせる
↓
ブラウザ脆弱性を攻撃
↓
Sandbox Escape
↓
OSへ侵入という経路を狙えます。
RBIは最初の、
悪意あるWebコンテンツ
↓
ローカルブラウザという接触そのものを減らします。
NISTのリファレンスアーキテクチャでも、悪意あるWebサイトをBrowser Isolationへ通すことで、マルウェアがユーザー端末や企業システムへ広がることを抑える構成が示されています。
RBIが特に有効な攻撃
Drive-by Download
ユーザーがWebサイトを閲覧しただけで、脆弱性や自動ダウンロードを利用してマルウェアが配布される攻撃です。
RBIでは、
悪意あるWebサイト
↓
マルウェア
↓
RBIコンテナとなり、
利用者PCまで到達させない設計ができます。
Malvertising
Malvertisingは、広告ネットワークを悪用して悪意あるサイトやスクリプトへ誘導する攻撃です。
正常なニュースサイト
↓
広告
↓
悪意ある広告
↓
リダイレクト
↓
攻撃サイトという経路があります。
CISAはMalvertising対策の一つとしてBrowser Isolationを紹介しています。
フィッシング
メール内のリンクをクリックしても、
メール
↓
怪しいリンク
↓
RBI
↓
フィッシングサイトとして隔離できます。
さらにRBI製品によっては、
Keyboard入力禁止
Copy禁止
Paste禁止
Upload禁止
Download禁止といった制御も可能です。
Cloudflare Browser Isolationでは、コピー、貼り付け、ファイルアップロード、ダウンロード、キーボード入力、印刷をポリシーで制御できます。
ただしRBIだけではフィッシングを完全に防げない
ここは非常に重要です。
ユーザーが、
偽Microsoft 365ログインを開いたとします。
RBIがWebページを安全に表示していても、
ユーザー
↓
ID入力
↓
Password入力
↓
偽サイトを許可していれば、認証情報は攻撃者へ送られます。
つまり、
マルウェアからPCを守ることと、
パスワードを盗ませないことは別問題です。
NISTのセキュリティシナリオでも、偽ログインページによる認証情報窃取は別途MFAやアクセス制御などで防御する必要があるとされています。
したがって、
RBI
+
Phishing-resistant MFA
+
URL Filtering
+
DNS Security
+
Identity Protectionという構成が必要です。
RBIで情報漏えいを防ぐ
RBIは「外から入ってくる攻撃」だけではなく、
社内 → インターネットの情報漏えい対策にも利用できます。
例えば、機密文書を扱うSaaSで、
コピー禁止
貼り付け禁止
印刷禁止
Download禁止
Upload禁止と設定できます。
Cloudflareの現在のBrowser Isolationポリシーでは、リモート→ローカルのコピー、ローカル→リモートの貼り付け、ダウンロード、アップロード、キーボード入力、印刷を個別に制御できます。
ファイルをPCへ落とさず閲覧する
RBIの有効な使い方の一つです。
通常は、
Webサイト
↓
PDF
↓
Download
↓
PC
↓
PDF Readerとなります。
RBIでは、
Webサイト
↓
PDF
↓
RBI
↓
Remote View
↓
画面だけ表示とできます。
Cloudflare Browser Isolationでは、ダウンロードを禁止しながら、ファイルをリモートブラウザ内で閲覧させるポリシーがあります。
RBIとTLSインスペクションの違い
前回解説したTLSインスペクションとは役割が違います。
TLSインスペクション
暗号化
↓
復号
↓
通信内容を検査
↓
再暗号化目的は、
「通信の中を見ること」
です。
RBI
Webコンテンツ
↓
リモートブラウザで実行
↓
結果だけ転送目的は、
「危険なコードを端末で動かさないこと」
です。
@startuml
left to right direction
rectangle "TLS Inspection" {
rectangle "HTTPSを復号" as TLS
rectangle "内容を検査" as Inspect
}
rectangle "Remote Browser Isolation" {
rectangle "Remote Browser" as RBI
rectangle "JavaScriptを遠隔実行" as JS
}
TLS --> Inspect
RBI --> JS
note bottom of Inspect
通信を見る技術
end note
note bottom of JS
実行場所を隔離する技術
end note
@enduml両者は競合技術ではありません。
併用できます。
実際、Cloudflare Browser Isolationでは透明な隔離ブラウジングを提供するため、インターネット通信のTLS復号も行うことが公式資料に記載されています。
RBIとSWGの違い
Secure Web Gatewayは、
URL
Domain
Category
HTTP
Download
Malwareなどを検査します。
安全
↓
Allow
危険
↓
Blockが基本です。
RBIを組み合わせると、
安全
↓
Allow
明確に危険
↓
Block
判断が難しい
↓
Isolateという3段階にできます。
この使い方が非常に重要です。
Cloudflareでも、SWGによるHTTP/HTTPSフィルタリングとBrowser Isolationを補完関係として設計しています。
RBIとEDRの違い
EDRは、
ブラウザ
↓
怪しいProcess
↓
PowerShell
↓
File作成など、端末内部の振る舞いを監視します。
RBIはその前段で、
危険コードそのものを
PCへ近づけない設計です。
Internet
↓
DNS
↓
SWG
↓
RBI
↓
Endpoint
↓
EDRという多層防御になります。
どのWebサイトをRBIへ送るべきか
すべてのWebサイトをRBIにすると安全性は高まります。
しかし、互換性、コスト、遅延の問題も増えます。
実務では、
Known Good
↓
通常閲覧
Unknown / Risky
↓
RBI
Known Malicious
↓
Blockという動的な分離が使いやすい構成です。
CloudflareのRBIでも、ID、セキュリティリスク、コンテンツなどを条件に動的にIsolateポリシーを適用できます。
RBIを適用しやすい対象
| 対象 | 推奨 |
| Newly Registered Domain | 高 |
| Uncategorized Domain | 高 |
| メールリンク | 高 |
| URL短縮サービス | 高 |
| Webメール添付 | 高 |
| ニュース・広告サイト | 中〜高 |
| ファイル共有サイト | 高 |
| 個人クラウドストレージ | 高 |
| 生成AI・外部SaaS | DLP目的で有効 |
| 社内SaaS | 要件次第 |
| 金融・決済 | 互換性検証必須 |
| WebRTC | 互換性検証必須 |
| WebGL | 製品依存 |
| WebAuthn | 製品・構成依存 |
確認方法
RBIが正しく動いているか確認する
RBIを導入したら、「画面が開く」だけで正常と判断してはいけません。
次を確認します。
| 確認 | 合格条件 |
| Webアクセス | RBI経由で正常表示 |
| JavaScript | Remote側で実行 |
| Download | ポリシー通り |
| Upload | ポリシー通り |
| Copy | ポリシー通り |
| Paste | ポリシー通り |
| ポリシー通り | |
| Keyboard | ポリシー通り |
| SSO | Login Loopなし |
| MFA | 正常認証 |
| WebAuthn | 利用方式に応じて動作 |
| WebRTC | 必要なサービスが正常 |
| Video | 許容できる品質 |
| WebGL | 必要なサイトが正常 |
| File View | ローカルへ保存されない |
| Session終了 | Remote Sessionが削除される |
| Logs | User・URL・Actionを追跡可能 |
RBI経由か判断するポイント
実装方法によって異なります。
Clientless RBI
Clientless方式では、URLがRBIサービス用URLへ変更されることがあります。
例えばCloudflare Clientless Web Isolationでは、専用のprefixed URLを使用する方式があります。
Inline RBI
利用者からは通常アクセスに見える場合があります。
この場合は、
- RBI管理ログ
- Gatewayログ
- Network Sessionログ
- Policy ID
- Remote Browser Session
を確認します。
対処方法・安全な導入方法
Step 1:いきなり全Webサイトを隔離しない
まず、
Unknown
New Domain
Phishing疑い
Malware疑い
File Sharing
Webmailなどから開始します。
Step 2:BlockとIsolateを分ける
明確なマルウェアサイトを、
RBIなら安全だからAllowとするのは適切ではありません。
Known Malicious
↓
BLOCK
Unknown
↓
ISOLATE
Known Good
↓
ALLOWとします。
RBIは「危険なサイトを許可する技術」ではありません。
判断できないWebサイトを安全側へ倒す技術として使う方が適切です。
Step 3:データ方向を設計する
RBIでは、
Internet → Userだけではなく、
User → Internetも重要です。
例えば、
Copy
Paste
Upload
Download
Print
Keyboardを個別に決めます。
高リスクサイト例
Copy Allow
Paste Block
Upload Block
Download Remote View Only
Print Block
Keyboard BlockこれならWebサイトは閲覧できます。
しかし、
Password入力
機密情報貼り付け
File Uploadはできません。
Step 4:SSOとMFAを検証する
RBIはWebブラウザ環境を分離するため、Cookieやセッション境界が変わります。
Cloudflareの隔離ポリシーでも、通常ブラウジングの既存Cookieやセッションがリモートブラウザへ引き継がれない場合があり、IdPを含めた隔離設計が必要になるケースが説明されています。
次をテストします。
SAML
OIDC
OAuth
WebAuthn
FIDO2
Passkey
Client Certificate
Third Party Cookie
SameSite CookieStep 5:WebAuthnを特に確認する
WebAuthnやハードウェアセキュリティキーは、RBI方式によって問題になることがあります。
Cloudflare Clientless Web Isolationでは、URLへprefixを付加する方式のため、YubiKeyやWebAuthnが動作しない構成があります。一方、inline deploymentでは動作可能とされています。
したがって、
RBI導入
↓
Passkeyが動かないという障害を、
IdP障害と誤認しないよう注意します。
Step 6:WebGL・動画・WebRTCをテストする
RBI製品ではレンダリング方式が異なります。
例えば2026年4月時点のCloudflare Browser Isolationでは、
- Webcam
- Microphone
- 一部WebGL
- WebGPU
- 一部動画Codec
などに制約があります。
これはRBI全体の制限ではありません。
採用製品ごとに確認します。
動作確認
本番展開前に、少なくとも次のシナリオを確認します。
正常アクセス
通常サイト
↓
Allow期待結果:
表示正常
ログ正常
余計な遅延なしUnknown Domain
Unknown
↓
Isolate期待結果:
Remote Browser起動
Web表示正常Known Malware
Known Malware
↓
Block期待結果:
RBIすら起動せず遮断Download
RBI
↓
File
↓
Download期待結果:
設定がRemote View Onlyなら、
ローカルPCへFileが存在しないことを確認します。
Paste
機密情報を模したテスト文字列を利用します。
INTERNAL-CONFIDENTIAL-TEST-0001期待結果:
Paste BlockUpload
テストファイルを使用します。
期待結果:
Upload Blockまたは、
許可対象サイトのみUpload可能になっていることを確認します。
再発防止・継続運用
RBIは導入して終わりではありません。
特に確認したい指標は次です。
Isolated Sessions
Blocked Sessions
Unknown Domain
Newly Registered Domain
Download Attempts
Upload Attempts
Clipboard Blocks
Keyboard Blocks
Phishing Categories
Malware Categories
RBI Errors
Rendering Errors
Session LatencyこれらをSOCで継続監視します。
RBIポリシーを動的にする
最初は安全だったWebサイトが侵害されることがあります。
逆に、新規サイトだからといって永久に隔離する必要もありません。
そのため、
Domain Reputation
Threat Intelligence
User Risk
Device Posture
URL Category
File Type
Identityからポリシーを動的に変えます。
@startuml
start
:Webアクセス;
if (既知の悪性サイト?) then (Yes)
:BLOCK;
stop
else (No)
endif
if (Known Good?) then (Yes)
:通常ブラウジング;
stop
else (No)
endif
if (Unknown / High Risk?) then (Yes)
:Remote Browser Isolation;
else (No)
:通常ブラウジング;
endif
if (機密操作?) then (Yes)
:Copy / Paste / Upload\nDownloadを制限;
endif
stop
@enduml注意点・よくある誤解
注意点1:RBIだけでフィッシングは防げない
RBIで、
evil.jsを隔離できても、
User
↓
Password
↓
Phishing Siteを許可すれば認証情報は盗まれます。
そのため、
- Phishing-resistant MFA
- DNS Protection
- URL Filtering
- Identity Protection
- Keyboard制御
が必要です。
CISAの2025年フィッシング対策でも、RBIだけでなく、Protective DNS、フィッシングフィルタ、最小権限、アプリケーション制御など複数対策が併記されています。
注意点2:RBIを理由にEDRを削除してはいけない
RBIが守るのは主にWeb経路です。
攻撃経路には、
Email Attachment
USB
VPN
RDP
Supply Chain
SaaS
Credential Theft
Internal Attackもあります。
RBIはEDRの代替ではありません。
注意点3:すべてRBIにすればよいとは限らない
全Web通信をRBIにすれば隔離範囲は広がります。
しかし、
- 遅延
- コスト
- Web互換性
- 動画品質
- WebGL
- WebRTC
- Passkey
- SSO
- ファイル転送
の問題も増えます。
Unknown / High Riskを中心に動的に隔離する構成の方が、実務では扱いやすい場合があります。
注意点4:RBIサービス自体が重要なセキュリティ境界になる
Web通信、入力、ファイルなどがRBIサービスを経由します。
一部のインライン型RBIではTLS復号も実施します。
Cloudflare Browser Isolationも、透明なWeb隔離を提供するためネットワーク上でTLS通信を復号することを明記しています。
そのため、
RBIなら絶対安全ではありません。
RBI事業者の、
Security
Isolation Architecture
Data Retention
Region
Logging
Encryption
Access Control
Incident Responseも評価する必要があります。
注意点5:Browser Site IsolationとRBIは別物
ChromeなどにあるSite Isolationは、
同じ端末のブラウザ内部でサイトごとのプロセスを分離する仕組みです。
RBIは、
ユーザー端末
│
│ ネットワーク
│
Remote Browserと実行場所そのものを遠隔化します。
同じ「Isolation」でも境界が違います。
Microsoft Defender Application Guardとの違い
Microsoft Defender Application Guardは、Windows上の仮想化技術を利用して信頼されていないWebサイトを隔離する仕組みでした。
これは典型的なクラウドRBIというより、
Local Hardware Isolationに近い方式です。
重要なのは現在の扱いです。
MicrosoftはMicrosoft Defender Application Guardを非推奨としています。
さらに、Windows 11 Version 24H2以降ではMicrosoft Defender Application Guardは利用できません。
したがって、2026年現在、
Windows標準のApplication Guardを
これからRBI代替として新規導入するという設計は適切ではありません。
Microsoft自身も、コンテナ型隔離が必要な場合にはWindows SandboxやAzure Virtual Desktopなどを検討するよう案内しています。
RBIに対する否定的な評価
RBIには明確な価値がありますが、過大評価も避けるべきです。
1. 「ユーザー教育が不要になる」という考えには賛成できない
マルウェア実行は隔離できても、
認証情報入力
OAuth Consent
MFA承認
情報入力は人間の判断が残ります。
ユーザー教育を完全に廃止できる技術ではありません。
2. 全通信RBIはコストに見合わない可能性がある
Known Goodな業務SaaSまで常時隔離すると、
コスト
遅延
互換性問題
Helpdesk対応が増える可能性があります。
リスクベースの動的隔離を先に検討すべきです。
3. RBIを導入すると新しい依存先を作る
RBIクラウドが障害を起こした場合、
Web閲覧不能
SaaS不能
認証不能になる設計も考えられます。
RBIサービスそのものが新しい可用性・セキュリティ境界になります。
4. 「RBIだからゼロデイを100%防げる」とは言えない
攻撃対象が、
Local Browserから、
Remote Browser
RBI Protocol
RBI Client
Identity
Sessionへ移る面もあります。
リスクを消す技術ではなく、端末から隔離環境へリスクを移し、被害範囲を限定する技術と考える方が正確です。
推奨する全体構成
企業環境なら、RBI単独ではなく次の構成を推奨します。
@startuml
top to bottom direction
rectangle "User" as U
rectangle "Protective DNS" as DNS
rectangle "Secure Web Gateway" as SWG
rectangle "Remote Browser Isolation" as RBI
rectangle "DLP" as DLP
rectangle "Internet / SaaS" as NET
rectangle "EDR" as EDR
rectangle "SIEM / SOC" as SOC
U --> DNS
DNS --> SWG
SWG --> NET : Known Good
SWG --> RBI : Unknown / High Risk
SWG --> SWG : Known Malicious\nBLOCK
RBI --> DLP
DLP --> NET
U --> EDR
DNS --> SOC
SWG --> SOC
RBI --> SOC
DLP --> SOC
EDR --> SOC
@enduml考え方は、
Known Malicious → Block
Unknown → Isolate
Known Good → Allowです。
kurutann.com / Kururu Securityへ応用するなら
以下は筆者の設計案です。
KururuシリーズへRBIの考え方を組み込むなら、単純な「クラウドブラウザ」だけにせず、既存のセキュリティイベントと統合すると有効です。
KururuReputationDB
↓
Domain Reputation
↓
KururuIPS
↓
Risk Score
↓
┌─────────────────────┐
│ score < 20 │
│ ALLOW │
├─────────────────────┤
│ score 20〜69 │
│ RBI │
├─────────────────────┤
│ score >= 70 │
│ BLOCK │
└─────────────────────┘さらに、
KururuReputationDB
+
KururuIPS
+
KururuXDR
+
KururuEDR
+
Remote Browserを連携します。
イベント例は次です。
{
"event_type": "rbi_session",
"domain": "unknown-example.test",
"reputation_score": 47,
"policy_action": "isolate",
"clipboard": "blocked",
"upload": "blocked",
"download": "remote_view_only",
"source": "kururu-rbi",
"malware_detected": false
}こうすると、
「怪しいからBLOCK」だけではなく、
「危険度は不明だが業務で必要なので隔離して閲覧」という第三の選択肢を作れます。
まとめ
Remote Browser Isolationは、
Webコンテンツを信用せず、危険なコードを利用者PCから離れた環境で実行する技術です。
通常は、
Internet
↓
Browser
↓
Endpointですが、RBIでは、
Internet
↓
Remote Browser
↓
安全な表示結果
↓
Endpointになります。
特に有効なのは、
Drive-by Download
Malvertising
Browser Exploit
Unknown Domain
Malicious JavaScript
File Download
Phishing Linkです。
しかし、
Credential Phishing
OAuth Abuse
Session Theft
Insider Threat
SaaS MisuseまでRBIだけで解決できるわけではありません。
そのため、
Protective DNS
+
Secure Web Gateway
+
Remote Browser Isolation
+
DLP
+
EDR
+
MFA
+
SOCとして設計します。
最も重要なのは、
Known Good
↓
ALLOW
Unknown / High Risk
↓
ISOLATE
Known Malicious
↓
BLOCKという考え方です。
RBIは「危険なWebサイトも自由に開ける魔法の技術」ではありません。
「ブロックするほどの根拠はない。しかし直接端末で開かせるほど信用もできない」というWebコンテンツに対して、非常に有効な中間防御になります。
FAQ
Q1. RBIとは何の略ですか?
Remote Browser Isolationです。
日本語では「リモートブラウザ分離」と呼ばれます。
Q2. RBIを使えばウイルス対策ソフトは不要ですか?
不要にはなりません。
RBIは主にWebブラウザ経由の攻撃を隔離します。
USB、メール添付、VPN、Supply Chainなど別経路の攻撃にはEDRやアンチマルウェアが必要です。
Q3. RBIを使えばフィッシングを完全に防げますか?
完全には防げません。
ユーザーが偽サイトへ認証情報を入力できる状態なら、RBI上でも認証情報を盗まれる可能性があります。
Keyboard入力制御、DNS、URL Filtering、FIDO2などと組み合わせます。
Q4. RBIはVDIと同じですか?
違います。
VDIはデスクトップ全体を遠隔化します。
RBIは主にブラウザだけを遠隔環境へ分離します。
Q5. RBIとTLSインスペクションは同じですか?
違います。
TLSインスペクションはHTTPS通信を復号して検査する技術です。
RBIはWebコンテンツの実行場所をリモートへ移す技術です。
両方を組み合わせることもできます。
Q6. RBIはZero Trustですか?
RBIそのものがZero Trust Architecture全体ではありません。
しかし、
Webサイトを最初から信用しないという考え方はZero Trustとの相性が良く、NISTのZero Trust関連実装でもBrowser Isolationを含む構成が検討されています。NIST SP 1800-35は2025年6月に最終版が公開されています。
Q7. RBIはWebサイトをブロックするのですか?
必ずしもブロックしません。
例えば、
Allow
Block
Isolateのように、Isolateを第三の選択肢として利用できます。
Q8. RBIでファイルダウンロードを禁止できますか?
対応製品では可能です。
Remote Browser内でファイルを閲覧し、ローカル端末への保存だけ禁止する方式もあります。Cloudflare Browser Isolationは現在このポリシーを提供しています。
Q9. RBIでコピー&ペーストを禁止できますか?
対応製品では可能です。
ローカル→Remote、Remote→ローカルを別々に制御できる製品もあります。
Q10. WebAuthnやPasskeyは使えますか?
製品と導入方式によります。
特にURLを書き換えるClientless方式では、WebAuthnのオリジン要件と衝突する場合があります。導入前に実際のIdPで検証してください。
Q11. Microsoft Defender Application GuardをRBIとして使えますか?
新規導入先としては推奨できません。
Microsoft Defender Application Guardは非推奨で、Windows 11 Version 24H2以降では利用できません。
参考情報
CISA:Phishing Guidance – Stopping the Attack Cycle at Phase One
RBIをフィッシング経由のマルウェア拡散を抑える対策として紹介しています。
URL:https://www.cisa.gov/sites/default/files/2025-03/Phishing%20Guidance%20-%20Stopping%20the%20Attack%20Cycle%20at%20Phase%20One%20508.pdf
CISA:Securing Web Browsers and Defending Against Malvertising
Browser IsolationとRemote Browser Isolationの基本構造を説明しています。
URL:https://www.cisa.gov/sites/default/files/2023-09/Non-Fed%20-%20Guidance_for_Securing_Your_Web_Browsers%20Aug-23%20Revision.pdf
NIST SP 1800-28:Data Confidentiality
Browser IsolationによるWebマルウェア隔離とデータ保護を扱っています。
https://www.nccoe.nist.gov/publication/1800-28/VolB/index.html
URL:https://www.nccoe.nist.gov/publication/1800-28/VolB/index.html
NIST SP 1800-35:Implementing a Zero Trust Architecture
Zero Trust Architecture実装のNIST Practice Guideです。最終版は2025年6月公開です。
https://csrc.nist.gov/pubs/sp/1800/35/final
URL:https://csrc.nist.gov/pubs/sp/1800/35/final
Cloudflare:Remote Browser Isolation
Cloudflare Browser Isolationの基本構造、アクティブコンテンツのリモート実行、プライバシーについて説明しています。
https://developers.cloudflare.com/cloudflare-one/remote-browser-isolation/
URL:https://developers.cloudflare.com/cloudflare-one/remote-browser-isolation/
Cloudflare:Isolation Policies
Copy、Paste、Download、Upload、Keyboard、PrintingなどのRBIポリシーを確認できます。
https://developers.cloudflare.com/cloudflare-one/remote-browser-isolation/isolation-policies/
URL:https://developers.cloudflare.com/cloudflare-one/remote-browser-isolation/isolation-policies/
Cloudflare:Known limitations
WebRTC、WebAuthn、WebGL、ファイルサイズなど、Browser Isolationの現在の制限事項を確認できます。
https://developers.cloudflare.com/cloudflare-one/remote-browser-isolation/known-limitations/
URL:https://developers.cloudflare.com/cloudflare-one/remote-browser-isolation/known-limitations/
Cloudflare:Canvas Remoting
Network Vector Renderingと2026年追加のCanvas Remotingについて説明しています。
https://developers.cloudflare.com/cloudflare-one/remote-browser-isolation/canvas-remoting/
URL:https://developers.cloudflare.com/cloudflare-one/remote-browser-isolation/canvas-remoting/
Microsoft:Microsoft Edge and Microsoft Defender Application Guard
Application Guardの非推奨とWindows 11 24H2以降で利用できないことが確認できます。
URL:https://learn.microsoft.com/en-us/deployedge/microsoft-edge-security-windows-defender-application-guard
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