製造物責任法(PL法)とは

製造物責任法(PL法:Product Liability法)は、製品の「欠陥」によって、それを使った人がケガをしたり、物が壊れたりした場合に、その製品を作った会社(製造業者など)に損害賠償の責任を負わせる法律です。昔は、被害者が「会社がわざと、あるいはうっかりミス(過失)で不良品を作った」ことを証明しなければならず、これは非常に困難でした。しかしPL法ができたことで、被害者は「製品に欠陥があったこと」と「その欠陥のせいで被害を受けたこと」さえ証明すれば、会社のミス(過失)を証明しなくても損害賠償を請求できるようになりました。ただし、対象となるのは「製造または加工された動産(形のある製品)」であり、ソフトウェアやデータ自体などの無形物、あるいは不動産(土地や建物)は対象外となります。IT業界では、ソフトウェアが組み込まれたハードウェア(家電など)が対象になるケースに注意が必要です。
具体例
あるメーカーが製造・販売したスマートフォンに、バッテリーの設計上の欠陥(不良)があったとします。消費者がそのスマートフォンを普通に使っていたところ、突然バッテリーが発火してヤケドを負ってしまいました。この場合、消費者はメーカーに対して製造物責任法(PL法)に基づき、治療費や慰謝料などの損害賠償を請求することができます。
もう少し詳しく
PL法(製造物責任法)は、消費者保護の観点から1995年に日本で施行されました。この法律における最重要の鍵は「欠陥(過失の不要)」と「製造物の定義」です。
法律で定義される「欠陥」とは、単に製品の性能が悪いことではなく、「その製造物が通常備えているべき安全性を欠いていること」を意味し、以下の3つに分類されます。
1. 設計上の欠陥:製品の設計段階から安全配慮が不足しており、その製品すべてが危険性を帯びている状態。
2. 製造上の欠陥:設計は正しいものの、工場での製造過程や検査のミスにより、一部の特定の製品だけが不良品となり危険性を帯びている状態。
3. 指示・警告上の欠陥:製品の危険性を完全に排除できない場合に、取扱説明書への注意書きや警告ラベルなどによる、適切な使い方やリスクの告知を怠った状態。
IT業界における最大の注目ポイントは、ソフトウェアやデジタルデータといった「無形物」の扱いです。PL法で保護の対象となる「製造物」は、「製造または加工された動産(形があり、持ち運びができる物)」と定義されています。そのため、物理的な実体のないソフトウェア、ダウンロードしたアプリケーションプログラム、インターネット経由でやり取りされるデジタルデータ、およびサービス自体はPL法の製造物には「該当しない(対象外)」となります。したがって、アプリのバグでパソコン内のデータが消去してしまっても、PL法に基づく損害賠償は請求できません(この場合は民法上の債務不履行責任や契約不適合責任が論点になります)。
ただし、そのソフトウェアがハードウェア(自動車、医療機器、ロボット、家電製品など)に制御用としてあらかじめ組み込まれており、プログラムのバグが原因でハードウェア自体が暴走して人にケガを負わせたような場合は、ソフトウェアが組み込まれたハードウェア全体が「欠陥のある製造物」とみなされるため、そのハードウェア製造業者がPL法に基づく損害賠償責任を負うことになります。
試験でのポイント
ITパスポート試験のストラテジ系(法務、企業活動)において、PL法が適用される範囲や条件を問う正誤問題が頻出します。
試験対策の最大のポイントは、「PL法の対象となるもの(動産)」と「対象外となるもの(無形物・不動産)」の区別を確実に頭に入れることです。
・対象となるもの:スマートフォン、パソコン、家電製品、自動車、パッケージ化されてメディア(CD-ROMなど)に記録されて販売されているソフトウェアなど(メディア付きのものは動産と扱われる場合があります)。
・対象外となるもの:ダウンロード販売のプログラム、スマートフォンアプリ、Webサービス、デジタルコンテンツ、不動産(建築物)、加工していない生鮮食料品など。
試験問題では、「インターネットからダウンロードしたウイルス対策ソフトの誤動作によりパソコン内の重要データが消失した場合、開発メーカーに対してPL法に基づき損害賠償を請求できる」といった文章の正誤を判定させます。この場合、ダウンロードしたソフトウェアは「動産」ではないためPL法は適用されず、この記述は「誤り」となります。このひっかけパターンを完璧に見抜けるように整理しておきましょう。
関連する用語
製造物責任法に関連する用語には、法律の対象となる物理的な物品を指す「動産」、民法において契約内容と異なる成果物に対して売主が負う「契約不適合責任」、PL法で賠償の直接要件となる製品の「欠陥」、そして消費者の保護を包括的に図るための「消費者契約法」があります。