連載「10日で作る Django CMS」の4日目です。 成果物: https://github.com/kurumonn/DjangoCMS(タグ
day-04)
1. 今日の結論
CMS として使えるようにする機能を足します。
- メディアライブラリ(アップロードした画像を1か所で管理する)
- アップロードファイルの検証(今日の主役)
- コメント投稿と承認制
- サイト内検索
- 関連記事
今日いちばん大事なのは、「拡張子が .jpg だから画像である」という判断が成立しないことを理解することです。ファイル名は攻撃者が自由に決められます。
2. 今日の完成画面
記事詳細に、関連記事とコメント欄が付きます。

サイト内検索も動きます。

3. 今日変更するファイル
media_library/ 新規アプリ
├── models.py MediaAsset
├── validators.py アップロード検証(今日の主役)
├── admin.py
└── tests.py
comments/ 新規アプリ
├── models.py Comment
├── forms.py ハニーポット付きフォーム
├── views.py
├── urls.py
├── admin.py
└── tests.py
core/ 新規(アプリ横断の道具)
└── ratelimit.py 簡易レート制限
blog/
├── models.py 変更(featured_image / search())
├── views.py 変更(SearchView / コメント表示)
└── forms.py 変更
templates/
├── blog/article_detail.html 変更
└── blog/search.html 新規
config/settings.py 変更(アップロード上限など)
4. 完成コード
4.1 アップロード検証
これが今日の中心です。
# media_library/validators.py
"""アップロードされた画像の検証。
アップロード処理は CMS でもっとも攻撃されやすい入口のひとつ。
「拡張子が .jpg だから画像だ」という判断は成立しない。
攻撃者はファイル名を自由に決められるため、次の3点を必ず確認する。
1. サイズ … 巨大ファイルでディスクとメモリを枯渇させられる
2. 実体 … 中身が本当に画像か(Pillow に開かせて確認する)
3. 形式 … 開けたとしても、許可した形式かどうか
特に SVG は「画像」でありながら中に JavaScript を書ける。
同一オリジンで配信すると XSS になるため、この CMS では受け付けない。
"""
import io
from django.core.exceptions import ValidationError
ALLOWED_IMAGE_FORMATS = {"JPEG", "PNG", "GIF", "WEBP"}
ALLOWED_EXTENSIONS = {".jpg", ".jpeg", ".png", ".gif", ".webp"}
MAX_UPLOAD_SIZE = 5 * 1024 * 1024 # 5 MiB
MAX_IMAGE_PIXELS = 50_000_000 # 50 メガピクセル
def validate_image_upload(uploaded_file, *, max_size: int = MAX_UPLOAD_SIZE) -> str:
"""アップロードファイルを検証し、Pillow が判定した形式名を返す。"""
# --- 1. サイズ -------------------------------------------------------
size = getattr(uploaded_file, "size", None)
if size is None:
raise UploadValidationError("ファイルサイズを取得できませんでした。")
if size == 0:
raise UploadValidationError("空のファイルはアップロードできません。")
if size > max_size:
limit_mb = max_size / (1024 * 1024)
raise UploadValidationError(f"ファイルサイズが大きすぎます(上限 {limit_mb:.0f} MB)。")
# --- 2. 拡張子 -------------------------------------------------------
name = (getattr(uploaded_file, "name", "") or "").lower()
if "." not in name:
raise UploadValidationError("拡張子のないファイルは受け付けません。")
extension = name[name.rfind(".") :]
if extension not in ALLOWED_EXTENSIONS:
allowed = "、".join(sorted(ALLOWED_EXTENSIONS))
raise UploadValidationError(f"この拡張子は許可されていません(許可: {allowed})。")
# --- 3. 実体 ---------------------------------------------------------
from PIL import Image, UnidentifiedImageError
# ★Image.MAX_IMAGE_PIXELS を書き換えないこと(理由は6章)★
try:
payload = _read_all(uploaded_file)
# SVG は Pillow が開けないので拡張子で弾かれるが、
# 「画像に見えるテキスト」を明示的に拒否したことを記録として残す。
if payload.lstrip()[:5].lower() in (b"<?xml", b"<svg"):
raise UploadValidationError(
"SVG は受け付けません(内部にスクリプトを埋め込めるため)。"
)
try:
# まず開いて、寸法と形式だけを取る。
# Image.open() はヘッダーしか読まないので、
# この時点では画素データを伸長していない。
with Image.open(io.BytesIO(payload)) as image:
image_format = image.format
width, height = image.size
# 伸長する前に、自分で画素数を数えて判定する。
if width * height > MAX_IMAGE_PIXELS:
raise UploadValidationError(
f"画像の画素数が大きすぎます"
f"({width}×{height}、上限 {MAX_IMAGE_PIXELS:,} 画素)。"
)
# 壊れたファイルの検出。verify() の後は読み直しが要る。
with Image.open(io.BytesIO(payload)) as image:
image.verify()
except UnidentifiedImageError as exc:
raise UploadValidationError(
"画像として読み取れませんでした。"
"拡張子だけを変えたファイルの可能性があります。"
) from exc
except Image.DecompressionBombError as exc:
# Pillow 自身の既定値に引っかかった場合の受け皿。
raise UploadValidationError("画像の画素数が大きすぎます。") from exc
except OSError as exc:
raise UploadValidationError("壊れた画像ファイルです。") from exc
finally:
# 後続の保存処理のために先頭へ巻き戻す。
if hasattr(uploaded_file, "seek"):
uploaded_file.seek(0)
if image_format not in ALLOWED_IMAGE_FORMATS:
allowed = "、".join(sorted(ALLOWED_IMAGE_FORMATS))
raise UploadValidationError(f"この画像形式は許可されていません(許可: {allowed})。")
# 拡張子と実体が食い違うファイルを拒否する。
expected = {
".jpg": "JPEG", ".jpeg": "JPEG", ".png": "PNG",
".gif": "GIF", ".webp": "WEBP",
}[extension]
if expected != image_format:
raise UploadValidationError(
f"拡張子({extension})と実際の形式({image_format})が一致しません。"
)
return image_format
4.2 保存先のパス
# media_library/models.py(抜粋)
import secrets
def upload_to(instance, filename: str) -> str:
"""保存先のパスを決める。
利用者が付けたファイル名は使わない。理由は3つある。
1. ../../etc/passwd のようなパス移動を狙う名前を防ぐ
2. 日本語や記号を含む名前が環境によって壊れるのを防ぐ
3. secret-contract.pdf のような名前から中身を推測されるのを防ぐ
拡張子だけは検証済みのものを引き継ぐ。
"""
extension = ""
if "." in filename:
extension = filename[filename.rfind(".") :].lower()
stamp = instance.created_at if instance.created_at else None
prefix = stamp.strftime("%Y/%m") if stamp else "unsorted"
return f"library/{prefix}/{secrets.token_hex(16)}{extension}"
4.3 コメントモデル
# comments/models.py(抜粋)
import hashlib
import hmac
from django.conf import settings
from django.db import models
def _ip_hash_key() -> bytes:
"""IP ハッシュ専用の鍵を返す。
SECRET_KEY をそのまま使わないのは、用途が違うため。
SECRET_KEY は漏えい時に必ず入れ替えるが、そのとき
IP ハッシュまで一斉に変わると、連投の検出やスパム対策の
履歴が過去と繋がらなくなる。鍵の寿命が違うものは鍵を分ける。
"""
key = getattr(settings, "COMMENT_IP_HASH_KEY", "") or settings.SECRET_KEY
return key.encode("utf-8")
def hash_ip(ip: str | None) -> str:
"""IP アドレスを鍵付きハッシュ(HMAC-SHA256)に変換する。
これは匿名化ではなく、DB 単体が漏れた場合の緩和策。
* 鍵なしの SHA-256 だけなら、IPv4 は約43億通りしかないので
総当たりで元の IP を求められる。実質的に可逆。
* 鍵付き HMAC なら、鍵を持たない相手は総当たりできない。
* ただし鍵も一緒に漏れれば、同じく総当たりできる。
"""
if not ip:
return ""
return hmac.new(_ip_hash_key(), ip.encode("utf-8"), hashlib.sha256).hexdigest()
class Comment(models.Model):
article = models.ForeignKey(
"blog.Article", on_delete=models.CASCADE, related_name="comments"
)
author = models.ForeignKey(
settings.AUTH_USER_MODEL, on_delete=models.SET_NULL,
null=True, blank=True, related_name="comments",
)
name = models.CharField("表示名", max_length=50)
email = models.EmailField("メールアドレス", blank=True, default="")
body = models.TextField("本文", max_length=2000)
is_approved = models.BooleanField("承認済み", default=False)
is_spam = models.BooleanField("スパム", default=False)
ip_hash = models.CharField("IPハッシュ", max_length=64, blank=True, editable=False)
created_at = models.DateTimeField("投稿日時", auto_now_add=True)
4.4 スパム対策(CAPTCHA なし)
# comments/forms.py(抜粋)
MIN_FILL_SECONDS = 3
class CommentForm(forms.ModelForm):
"""CAPTCHA を使わずにスパムを減らす手段を2つ入れる。
1. ハニーポット … 人間には見えない入力欄。自動入力ボットだけが埋める。
2. 送信までの時間 … 表示から3秒未満の送信は機械とみなす。
どちらも完璧ではないが、利用者に負担をかけずに
大半の自動投稿を落とせる。
"""
website = forms.CharField(
required=False,
widget=forms.TextInput(attrs={
"class": "honeypot", "tabindex": "-1",
"autocomplete": "off", "aria-hidden": "true",
}),
label="ウェブサイト(入力しないでください)",
)
rendered_at = forms.IntegerField(widget=forms.HiddenInput, required=False)
def clean_website(self):
if self.cleaned_data.get("website", ""):
raise forms.ValidationError("送信を受け付けられませんでした。")
return ""
def clean_rendered_at(self):
value = self.cleaned_data.get("rendered_at")
if value is None:
raise forms.ValidationError("送信を受け付けられませんでした。")
elapsed = int(time.time()) - int(value)
if elapsed < MIN_FILL_SECONDS:
raise forms.ValidationError("送信が速すぎます。数秒おいてからお試しください。")
return value
4.5 サイト内検索
# blog/models.py(抜粋)
def search(self, query: str):
"""タイトルと本文からの全文検索。
SQLite / PostgreSQL のどちらでも動くよう、まずは icontains で実装する。
PostgreSQL へ移行したあとは SearchVector に差し替えられるよう、
検索条件をこの1メソッドへ閉じ込めておく。
"""
from django.db.models import Q
query = (query or "").strip()
if not query:
return self.none()
# 空白区切りの語をすべて含む記事を返す(AND 検索)。
queryset = self
for term in query.split()[:5]: # 語数を制限し、極端に重いクエリを防ぐ
queryset = queryset.filter(Q(title__icontains=term) | Q(body__icontains=term))
return queryset
5. コードの意味
Image.verify() を2回開き直す理由
with Image.open(io.BytesIO(payload)) as image:
image.verify() # 壊れていないか調べる
with Image.open(io.BytesIO(payload)) as image:
image_format = image.format # 開き直して形式を採る
| 部分 | 意味 |
|---|---|
io.BytesIO(payload) |
メモリ上のバイト列をファイルのように扱う |
verify() |
壊れた画像を検出する。実行後は画像を使えなくなる |
image.format |
Pillow が判定した形式("PNG" など) |
verify() の後にそのまま image.format を読もうとすると失敗します。これは Pillow の仕様です。
uploaded_file.seek(0) を忘れない
finally:
if hasattr(uploaded_file, "seek"):
uploaded_file.seek(0)
アップロードファイルは一度読むと、ファイルポインタが末尾へ進みます。巻き戻さないと、保存処理が 0 バイトのファイル を書き込みます。
テストで固定します。
def test_file_pointer_is_rewound_for_saving(self):
uploaded = upload("photo.png", make_image_bytes("PNG"))
validate_image_upload(uploaded)
self.assertEqual(uploaded.tell(), 0)
self.assertTrue(uploaded.read())
Q オブジェクト
from django.db.models import Q
queryset.filter(Q(title__icontains=term) | Q(body__icontains=term))
| 記号 | 意味 |
|---|---|
\| |
OR |
& |
AND |
~ |
NOT |
__icontains |
大文字小文字を区別しない部分一致 |
filter(a=1, b=2) は AND になります。OR を書きたいときだけ Q が必要です。
鍵付きハッシュ(HMAC)で IP を保存する
return hmac.new(_ip_hash_key(), ip.encode("utf-8"), hashlib.sha256).hexdigest()
IP アドレスをそのまま保存すると、データベースが漏れたときに「誰がどの記事にコメントしたか」の追跡材料になります。
ハッシュにすると、同じ人の連投は検出できます(同じ IP は同じハッシュ)。
「復元できない」とは書けない
ここは正確に書く必要があります。
IPv4 は約43億通りしかありません。現代の PC なら、SHA-256 を43億回計算するのは数分の作業です。つまり鍵を混ぜないハッシュは、実質的に可逆です。パスワードと違って、候補が有限で、しかも少ないためです。
鍵を混ぜると、鍵を知らない相手はこの総当たりができません。ここまでが効果です。
そして、ここから先は効果がありません。
- 鍵も一緒に漏れれば、同じく43億回試すだけで元の IP が分かります
- したがってこれは匿名化ではなく、DB 単体が漏れた場合の緩和策です
- 鍵は DB とは別の場所(環境変数)に置いて初めて意味を持ちます
「ハッシュ化してあるから個人情報ではない」とは言えません。
なぜ連結ではなく HMAC なのか
最初はこう書いていました。
salted = f"{settings.SECRET_KEY}:{ip}".encode("utf-8")
return hashlib.sha256(salted).hexdigest()
動きますが、2点直しました。
1. 連結ではなく HMAC を使う。文字列を繋ぐ方式は、鍵とデータの境界が曖昧になります。SHA-256(鍵 ‖ データ) の形は、ハッシュ関数の内部構造によっては長さ拡張攻撃が成立する形として知られています(SHA-256 はこれに該当します)。HMAC は、この問題を避けるために設計された標準の構成です。
今回の用途で直ちに危険になるわけではありませんが、鍵付きハッシュには HMAC を使うと覚えておけば、用途が変わったときに考え直さずに済みます。
2. SECRET_KEY を使わず、専用の鍵を用意する。
COMMENT_IP_HASH_KEY = require("DJANGO_COMMENT_IP_HASH_KEY")
理由は鍵の寿命が違うことです。
SECRET_KEY は、漏えいしたら必ず入れ替えます。そのとき IP ハッシュも同じ鍵で作っていると、入れ替えた瞬間に過去のハッシュと一致しなくなります。連投の検出もスパム対策の履歴も、そこで切れます。
「鍵を入れ替えなければならない日」に、「入れ替えると別の機能が壊れる」という状態を作らないでください。これは鍵を分けるだけで避けられます。
6. 内部で起きていること
拡張子を変えたファイルはどう見えるか
攻撃者が用意するファイル: shell.php
↓ ファイル名を変える
photo.png(中身は PHP のまま)
↓ アップロード
拡張子だけを見る検証は、これを通してしまいます。
Pillow に開かせると、こうなります。
Image.open(b"<?php system($_GET['c']); ?>")
↓
UnidentifiedImageError
中身を見れば分かります。
SVG がなぜ危険なのか
SVG は XML なので、中に JavaScript を書けます。
<svg xmlns="http://www.w3.org/2000/svg">
<script>alert(document.cookie)</script>
</svg>
これを /media/library/xxx.svg として同一オリジンで配信し、利用者がそのURLを直接開くと、サイトのオリジンでスクリプトが動きます。
ここで「セッション Cookie を盗まれる」と書きたくなりますが、それは正確ではありません。 1日目でこう設定しています。
SESSION_COOKIE_HTTPONLY = True
HttpOnly が付いた Cookie は JavaScript から読めません。document.cookie にセッション ID は出てきません。
では安全かというと、そうではありません。Cookie を読めなくても、Cookie は自動的に送られます。
同一オリジンでスクリプトが動けば、次のことができます。
| できること | 仕組み |
|---|---|
| ログイン状態のままリクエストを送る | fetch() に Cookie が自動で付く |
| CSRF トークンを取得する | 画面の HTML から読める |
| 記事の投稿・編集・削除 | 上の2つを組み合わせる |
| 画面に表示されている情報を送信する | DOM を読んで外部へ送る |
| メールアドレスの変更 | 設定画面を読み、その値で送信する |
つまり Cookie の値そのものを持ち出す代わりに、被害者のブラウザーを操作台として使うという形になります。「盗まれる」より「使われる」の方が実態に近いです。
HttpOnly は「Cookie の値が外部サーバーへ渡ること」を防ぎます。これは意味のある防御です(渡ってしまえば攻撃者は自分の環境から何度でも使えます)。ただし同一オリジンで JavaScript が動くこと自体は防げません。
対策は次のいずれかです。
- SVG を受け付けない(この CMS の選択)
- 別ドメインから配信する
Content-Disposition: attachmentで必ずダウンロードさせる
学習用の CMS では、いちばん単純な 1 を選びました。
decompression bomb
1000×1000 の PNG(数十 KB)
↓ 実は 50000×50000 と宣言されている
展開すると 25 億ピクセル → 数十 GB のメモリ
小さいファイルで、サーバーのメモリを食い尽くせます。
Pillow には上限の仕組みがあります。最初はこう書いていました。
original_limit = Image.MAX_IMAGE_PIXELS
Image.MAX_IMAGE_PIXELS = 50_000_000
try:
...
finally:
Image.MAX_IMAGE_PIXELS = original_limit
この書き方は2つの理由で誤りでした。 両方とも後から気づいたものです。
誤り1: 他のリクエストに影響する
Image.MAX_IMAGE_PIXELS は、Pillow というモジュール全体で共有されるただの変数です。プロセス内のどのコードから見ても同じ値です。
Gunicorn のスレッドワーカーのように、同じプロセスで複数のリクエストを同時に処理する構成では、片方の書き換えがもう片方から見えます。
リクエストA: 50_000_000 に下げる
リクエストB: 画像を開く ← A の設定が効いてしまう
リクエストA: 元の値に戻す
リクエストB: 画像を開く ← 今度は既定値に戻っている
B の結果が A の進み具合で決まります。落ちるときと落ちないときがあるという、最も再現しにくい形です。
finally で戻しているので前後を比べれば差はありません。問題が起きるのはその途中です。
誤り2: そもそも 50 メガピクセルで止まっていなかった
こちらの方が深刻でした。
Pillow はこの値を境に2段階の反応をします。
| 画素数 | Pillow の反応 |
|---|---|
MAX_IMAGE_PIXELS 以下 |
何もしない |
MAX_IMAGE_PIXELS 超 |
DecompressionBombWarning(警告だけ) |
MAX_IMAGE_PIXELS の2倍超 |
DecompressionBombError(例外) |
50 メガピクセルを指定しても、例外になるのは 1億画素を超えてからです。その間の画像は警告が出るだけで、そのまま通っていました。
実際に確かめた結果です(Pillow 12.3.0、MAX_IMAGE_PIXELS = 50_000_000)。
10000x4900 = 49,000,000 px -> 通った / 警告なし
10000x6000 = 60,000,000 px -> 通った / DecompressionBombWarning
10000x12000 = 120,000,000 px -> DecompressionBombError
真ん中の行が問題です。上限を超えているのに通っています。
「上限を 50 メガピクセルにした」と書いてあるのに、実際には 1億画素まで通っていた、ということです。テストは通っていました。境界の画像を試していなかったためです。
直した形
Pillow の共有設定には触れず、開いた後に自分で数えます。
with Image.open(io.BytesIO(payload)) as image:
width, height = image.size
if width * height > MAX_IMAGE_PIXELS:
raise UploadValidationError("画像の画素数が大きすぎます。")
Image.open() はヘッダーしか読まないので、この時点で画素データは伸長されていません。伸長する前に数えられます。
共有されている値を書き換えないので、同時に何本走っていても結果が変わりません。上限もそのままの値で効きます。
Pillow の既定値(約 89,478,485 画素)はそのまま残しておき、自前の検査をすり抜けた場合の受け皿として DecompressionBombError も捕まえています。
どうしても Pillow の既定値そのものを変えたい場合は、 リクエストごとではなく起動時に1回だけ設定します (
AppConfig.ready()など)。 「一時的に変えて戻す」が成立しない種類の値だと考えてください。
アップロード上限は3か所で決まる
Nginx client_max_body_size 10m; ← デプロイ編6日目
↓
Django DATA_UPLOAD_MAX_MEMORY_SIZE ← 受け取る段階の保険
↓
アプリ MAX_UPLOAD_SIZE ← 実際の判定
Nginx の設定を忘れると、Django まで届く前に 413 で切られます。逆に Nginx だけ緩くしても、Django 側で止まります。3つとも意識してそろえます。
7. コマンドの説明
pip install pillow
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 画像を扱うライブラリを入れる |
| 正常例 | Successfully installed pillow-12.3.0 |
| 異常例 | ビルドエラー(Linux では libjpeg-dev などが必要な場合がある) |
| 判断方法 | python -c "from PIL import Image; print(Image.__version__)" |
ImageField を使うと、Django のシステムチェックが Pillow を要求します。入れずに makemigrations すると、次のエラーになります。
fields.E210: Cannot use ImageField because Pillow is not installed.
python manage.py test media_library
アップロード検証だけを試したいときに使います。
Ran 20 tests in 0.4s
OK
8. よくあるエラー
記録は docs/errors/day-04.md にあります。
8.1 テンプレートを編集したのに画面が変わらない
症状: コメント欄を追加したのに、再読み込みしても古い画面のまま。エラーも出ない。
原因: Django 4.1 以降、DEBUG=True でもテンプレートはプロセス内でキャッシュされます。runserver --noreload を使っているとプロセスが生き続けるため、古いテンプレートが返り続けます。
やってしまいがちな遠回り:
- ブラウザーのキャッシュを疑ってスーパーリロードする → 変わらない
collectstaticを実行する → テンプレートは静的ファイルではないので無関係- テンプレートの継承やブロック名を疑って書き換える → 元から正しい
対処: サーバーを再起動します。--noreload を外せば自動リロードされます。
8.2 X-Forwarded-For からどの値を取るべきか間違える
症状: 例外は出ないが、レート制限が効かない。
原因: Nginx の proxy_set_header X-Forwarded-For $proxy_add_x_forwarded_for; は、受け取ったヘッダーの 末尾へ 接続元を追記します。
利用者が送ったヘッダー : X-Forwarded-For: 1.2.3.4 ← 偽装できる
Nginx が書き換えた結果 : X-Forwarded-For: 1.2.3.4, 203.0.113.9
↑ここだけが信用できる
左端を採用すると、利用者が好きな IP を名乗れて、制限を無限に回避されます。
対処: 信頼するプロキシの段数を設定で明示し、右から数えます。
proxy_count = getattr(settings, "TRUSTED_PROXY_COUNT", 0)
if proxy_count > 0:
parts = [p.strip() for p in forwarded.split(",") if p.strip()]
index = len(parts) - proxy_count
if 0 <= index < len(parts):
return parts[index]
return request.META.get("REMOTE_ADDR", "")
補足: このとき間違えたのは テストの方 でした。実装は最初から正しく右から数えていたのに、テストの期待値を「左端が正しい」と書いて失敗しました。テストが落ちたとき、必ずしも実装が悪いとは限りません。
8.3 保存されたファイルが 0 バイトになる
原因: 検証でファイルを読み切ったあと、seek(0) で巻き戻していません。「5. コードの意味」を参照してください。
8.4 コメントが表示されない
仕様です。 この CMS では、コメントは既定で 未承認 です。管理画面から承認すると表示されます。
comment.is_approved = False # 承認は管理者が行う
9. 動作確認
記事とコメント
- [ ] 記事詳細にコメント欄が出る
- [ ] コメントを投稿すると「承認後に表示されます」と案内される
- [ ] 投稿直後は、そのコメントが表示されない
- [ ] 管理画面で承認すると表示される
- [ ] コメント本文に
<script>alert(1)</script>と書いても文字として表示される - [ ] 下書き記事にはコメントできない
アップロード検証
管理画面の「メディア」から、次を1つずつ試してください。
- [ ] 正しい PNG → 保存できる
- [ ] 5 MB を超えるファイル → 「大きすぎます」
- [ ]
.phpファイル → 「この拡張子は許可されていません」 - [ ] SVG → 「SVG は受け付けません」
- [ ] テキストファイルを
.pngに改名 → 「画像として読み取れませんでした」 - [ ] 本物の PNG を
.jpgに改名 → 「拡張子と実際の形式が一致しません」
最後の2つが通ってしまうなら、実体の検証が効いていません。
検索
- [ ] タイトルに含まれる語で検索できる
- [ ] 本文に含まれる語で検索できる
- [ ] 下書き記事は検索結果に出ない
- [ ] 空の検索語ではエラーにならない
10. セキュリティ上の注意
検証の順番に意味がある
1. サイズ … 先に切らないと、次の読み込みでメモリを食う
2. 拡張子 … 安いチェックで大半を落とす
3. 実体 … いちばん重い。ここまで来たものだけに行う
実体の検証はファイル全体をメモリへ読みます。サイズを先に確認しないと、その時点で攻撃が成立します。
Content-Type を信用しない
def test_content_type_header_is_not_trusted(self):
"""Content-Type は利用者が自由に付けられるので、判断材料にしない。"""
self.assert_rejected(upload("lie.png", b"not an image at all", "image/png"))
ブラウザーが送る Content-Type は、利用者が書き換えられます。curl -H "Content-Type: image/png" と付ければ何でも名乗れます。
ファイル名を保存先に使わない
def test_uploaded_filename_is_not_used_as_is(self):
path = upload_to(asset, "../../../etc/passwd.png")
self.assertNotIn("..", path)
self.assertNotIn("passwd", path)
Django の FileSystemStorage にもパス移動の対策はありますが、そもそも利用者の入力をパスに使わない のが確実です。
コメントは既定で非公開
def save(self, commit=True):
comment = super().save(commit=False)
# 承認は管理者が行う。既定では公開しない。
comment.is_approved = False
「公開してから消す」より「承認してから公開する」方が安全です。スパムや誹謗中傷が一瞬でも表示される時間をゼロにできます。
検索語の長さと語数を制限する
self.query = self.request.GET.get("q", "").strip()[:100]
for term in query.split()[:5]:
制限が無いと、?q= に長大な文字列や大量の語を入れて、サーバーに重い LIKE 検索を何十個も実行させられます。
11. 今日の復習問題
問1. 「拡張子が .png だから画像である」という判断が成立しないのはなぜですか。
問2. SVG を受け付けない理由を説明してください。受け付ける場合、どのような対策が必要ですか。
問3. 検証の順番を「サイズ → 拡張子 → 実体」にしている理由は何ですか。
問4. コメントの IP アドレスを生のまま保存せず、SECRET_KEY を混ぜたハッシュにするのはなぜですか。SECRET_KEY を混ぜない単純な SHA-256 では不十分な理由も答えてください。
問5. X-Forwarded-For の左端の値を利用者の IP として採用すると、どのような問題が起きますか。
解答
問1.ファイル名は利用者が自由に決められるためです。中身が PHP スクリプトでも、.png という名前を付けられます。中身を Pillow に開かせて、実際に画像として読めるかを確認する必要があります。
問2.
SVG は XML なので、内部に <script> を書けます。同一オリジンで配信すると、閲覧者のブラウザーでスクリプトが実行されます(XSS)。
SESSION_COOKIE_HTTPONLY = True にしてあるため、セッション Cookie の値を JavaScript から読み出すことはできません。しかし Cookie はリクエストに自動で付くので、ログイン状態のまま記事を投稿・削除したり、画面に表示されている情報を外部へ送ったりはできます。CSRF トークンも画面から読めます。
受け付ける場合は、別ドメインから配信するか、Content-Disposition: attachment で必ずダウンロードさせる必要があります。
問3.実体の検証はファイル全体をメモリへ読み込みます。サイズを先に確認しないと、その読み込み自体が攻撃になります。拡張子の確認は安価なので、実体の検証より前に置いて大半を落とします。
問4.生の IP を保存すると、データベースが漏れたときに「誰がどの記事にコメントしたか」の追跡材料になります。IPv4 は約43億通りしかないため、ソルト無しの SHA-256 は全通りを計算して照合すれば元に戻せます。SECRET_KEY を混ぜると、鍵を知らない限り総当たりができません。
問5. Nginx はヘッダーの末尾へ接続元を追記するため、左端は利用者が偽装した値です。左端を採用すると、リクエストごとに違う IP を名乗ることでレート制限や IP 制限を完全に回避できます。
12. Git の差分
タグ : day-04
コミット: day-04: メディアライブラリ・コメント・サイト内検索を作る
git diff day-03 day-04
アップロード検証のテストだけを見たい場合はこちらです。
git show day-04 -- media_library/tests.py
13. 次回予告
5日目は、WordPress 級の記事管理を作ります。
- 下書き → レビュー待ち → 公開 の承認フロー
- 公開を独立した権限にする(記事を書ける人=勝手に公開できる人、にしない)
- 予約投稿
- リビジョン(変更履歴)と過去版への復元
- 追記専用の操作ログ
「公開」を独立した権限にするだけで、アカウントを1つ乗っ取られたときの被害が大きく変わります。
連載「10日で作る Django CMS」(第1部)
- 1日目: 環境構築とカスタムユーザー
- 2日目: モデルとリレーション入門
- 3日目: CRUDと権限設計
- 4日目: 画像・コメント・検索(この記事)
- 5日目: 下書き・予約投稿・履歴
- 6日目: SEO・OGP・サイトマップ
- 7日目: 管理画面とブロックエディター
- 8日目: allauthとワンタイムコード
- 9日目: パスキーとTOTPの多要素認証
- 10日目: Docker・PostgreSQL・本番設定
連載「10日で学ぶ Django 本番デプロイ」(第2部)
- 11日目: Linuxサーバー初期設定(公開予定)(公開予定)
- 12日目: SSHを鍵認証だけにする(公開予定)(公開予定)
残り 8 回は順次公開します。
成果物のソースコードは GitHub にあります。1日分が1つのタグ(day-01〜)に対応しているので、git diff day-02 day-03 で「その日に何が変わったか」だけを読めます。
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