標的型攻撃とは
標的型攻撃とは、不特定多数のユーザーを対象にした無差別なサイバー攻撃とは異なり、官公庁、特定の企業、民間団体など、明確に狙いを定めたターゲットに対して行われるサイバー攻撃の手法です。攻撃者は事前に入念な調査を行い、標的の組織が使用しているソフトウェアの弱点(脆弱性)や、取引先との関係性などを調べ上げます。その上で、日常の業務連絡や問い合わせを装った極めて巧妙な偽メールを送り、ウイルス入りのファイルを添付して実行させたり、不正なサイトを踏ませたりして組織の内部ネットワークに侵入し、機密情報や個人情報を盗み出します。
具体例
例えば、ある自動車部品メーカーの採用担当者宛てに「履歴書の送付」という件名で、日本語として一切不自然ではない文面のメールが届きます。添付されている「履歴書.pdf」というファイルを開いた瞬間に、パソコンの画面には何も起きない裏で、隠されたマルウェアが起動し、社内のネットワークを通じて設計データや顧客情報を外部のサーバーへ送信し始めるという事例があります。
もう少し詳しく
標的型攻撃の最大の特徴は、攻撃のステップが長期的かつ段階的(APT: Advanced Persistent Threat)である点です。攻撃者はまず、ソーシャルメディア(LinkedInや企業の公式Webサイトなど)から社員の名前やメールアドレス、部署構成などの組織情報を収集します。その後、ターゲットに合わせて文面を巧妙にカスタマイズした「標的型攻撃メール」を送信します。このメールには、セキュリティソフトをすり抜けるように特別に開発された未知のマルウェアが仕込まれており、感染した端末から社内ネットワークへの侵入(バックドアの構築)が行われます。一度内部に入り込むと、攻撃者は時間をかけてネットワーク内部を探索し、ドメインコントローラーや重要データベースの管理者権限を盗み取ります。最終的に、業務システムから重要な機密データや個人情報を暗号化して隠蔽しつつ、少しずつ外部サーバーへ転送します。標的型攻撃の派生として、ターゲットが頻繁に訪問する特定のWebサイト(業界ニュースサイトなど)に事前に改ざんを施し、訪問しただけで感染させる「水飲み場型攻撃(Watering Hole Attack)」という手法も知られています。
試験でのポイント
試験では、標的型攻撃メールの手口や特徴に関する理解が重視されます。「特定の企業や組織を狙う」「業務に関連するような自然な日本語のメールを送りつける」「添付ファイルや不正なリンクを開かせてマルウェアに感染させる」といった特徴を選択させる問題が基本です。また、関連する攻撃手法として、ターゲットがよく利用するWebサイトを改ざんして待ち伏せる「水飲み場型攻撃」の用語定義や、セキュリティ対策としての「入口対策(ファイアウォールやウイルス対策ソフトなど)」と「出口対策(内部から外部の不正なサーバーへデータが送信されるのを防ぐ・検知する対策)」、さらに攻撃の各プロセス(侵入、拡大、送出)に応じた「多層防御」の考え方について問われることが多いため、それぞれの対策方法を体系的に理解しておく必要があります。
関連する用語
標的型攻撃に関連する用語には、ターゲットがアクセスするWebサイトを罠にする「水飲み場型攻撃」、長期間にわたり執拗に攻撃を続ける「APT攻撃」、そして攻撃の段階ごとに複数の防壁を敷く「多層防御」があります。これらを組み合わせることで、強固な防衛組織の構築を学びます。