ゼロトラストとは
ゼロトラスト(Zero Trust)とは、「何も信頼しない(Zero Trust)」という前提に立ち、ネットワークの内部と外部を区別せず、すべてのアクセスに対して認証や安全性の検査を行うセキュリティの考え方のことです。従来の「社内ネットワーク(内側)は安全だから信頼し、インターネット(外側)は危険だからファイアウォールで防ぐ」という「境界防御」の限界を克服するために提唱されました。
近年、テレワークの普及により社外から業務システムにアクセスすることが増え、またクラウドサービスの利用も一般化しました。これにより、守るべき境界線が曖昧になりました。ゼロトラスト環境では、どこからのアクセスであっても「ユーザーのID」「使用している端末の安全性」「アクセス元の場所や時間」などをその都度厳格にチェック(検証)します。また、アクセス権限は必要最小限に制限し、通信はすべて暗号化します。
具体例
社員が会社のノートパソコンを使って、自宅のWi-Fiから社内の機密データが含まれるクラウドサービスにアクセスしようとする場合、以下のように多重の検証が実行されます。
- IDとパスワードの入力に加え、スマートフォンのアプリによる「多要素認証(MFA)」を求める。
- アクセス元のパソコンが、会社から支給された許可端末(証明書あり)であるかを確認する。
- OSのセキュリティアップデートが最新であり、セキュリティソフトが正常に稼働しているかを裏で判定する。
もう少し詳しく
ゼロトラストは、米国の調査会社Forrester Researchのジョン・キンダーバーグ氏によって2010年に提唱されたセキュリティモデルです。従来の「ネットワークの境界線(ファイアウォール等)の内側は安全」という境界防御モデル(パラメータセキュリティ)に対して、「すべてのトラフィックは信頼できない」という前提に立ちます。
ゼロトラストを実現するための具体的な構成要素には、以下の7つの柱(Pillars)があります。(1) アイデンティティ(ユーザー認証)、(2) デバイス(端末の健全性)、(3) ネットワーク(セグメント化と暗号化)、(4) アプリケーション(アクセス認可)、(5) データ(機密情報の保護)、(6) 監視と可視化、(7) 自動化とオーケストレーションです。
技術的には、シングルサインオン(SSO)や多要素認証(MFA)、端末の状態をリアルタイムで把握する「EDR(Endpoint Detection and Response)」や「MDM(Mobile Device Management)」、およびクラウド上の安全なゲートウェイを通じてサービスにアクセスさせる「SASE(Secure Access Service Edge)」や「ZTNA(Zero Trust Network Access)」などが組み合わされて実現されます。
試験でのポイント
試験では、従来の「境界防御モデル」と「ゼロトラストモデル」の思想的な違いや、ゼロトラストが求められるようになった社会的背景(テレワークの普及、クラウドサービスの活用拡大、巧妙化するサイバー攻撃など)について問われます。
また、「一度認証したからといって継続的に信頼するわけではない」という継続的な監視・検証の重要性や、最小特権の原則(アクセス権限を必要最小限に絞る)といったゼロトラストの基本原則が問われます。セキュリティ機器の名前だけでなく、概念の全体像を捉えておくことが正解への鍵となります。
関連する用語
関連する用語には、PCやスマホなどのエンドポイント(末端)を監視して不審な動きを検知する「EDR」、境界防御を担ってきた「ファイアウォール」、およびインターネットと社内LANの間に設ける「DMZ」があります。