インシデント管理とは
インシデント管理(いんしでんとかんり)とは、ITサービスにおいて、ユーザーがシステムを通常通りに使えなくなるようなトラブル(インシデント)が発生した際、その根本的な原因の調査よりも、まずは「サービスを可能な限り迅速に正常な状態に復旧させること」を最優先に行う管理プロセスのことです。
オフィスで使っているプリンターが紙詰まりを起こしたときの対応に例えられます。このとき、インシデント管理が目指すのは、「なぜ紙が詰まったのか(ローラーの摩耗か、紙の湿気か)」を突き止めることではなく、まずは「詰まった紙を引っ張り出して、次の印刷ができるようにすること」です。原因究明は後回しにし、利用者のビジネスが止まる時間を最小限に抑えます。
具体例
インターネット通販のWebサイトで、お客様が「購入ボタンを押してもエラーになり、買い物ができない」というインシデントが発生したとします。このとき、インシデント管理チームは以下のように動きます。
- プログラムのバグをじっくり探すのではなく、まずは予備のサーバーに切り替えたり、一時的に前日の安定したプログラムに戻したりして、お客様が買い物を再開できるようにします。
- システムが復旧して買い物が問題なく行えるようになった段階で、この「インシデント」は解決したとみなされ、その後に根本原因の調査(問題管理)へと引き継がれます。
もう少し詳しく
インシデント管理は、ITILで定義されているサービス運用プロセスの中で最も稼働頻度が高いプロセスの一つです。「インシデント」とは、ITサービスの停止や品質低下を招く(またはその恐れがある)すべての出来事を指します。インシデント管理の目的は、ビジネスへの悪影響を最小限に抑えるために「ワークアラウンド(一時的な回避策)」などを用いて、ユーザーの利用環境を迅速に回復させることです。そのため、詳細な原因究明やバグの修正といった根本解決は、次の段階である「問題管理」プロセスに委ねられます。インシデント対応の履歴はナレッジベースに蓄積され、サービスデスク担当者が過去の類似事象を参照して素早く自己解決できるような仕組みづくりもインシデント管理の重要な側面です。発生したインシデントには優先度が設定されます。
試験でのポイント
試験での最大の頻出ポイントは、「インシデント管理」と「問題管理」の役割の違いです。インシデント管理は「システムの迅速な一時復旧(暫定対応)を目的とする」のに対し、問題管理は「トラブルの根本的な原因を究明し、再発を防止することを目的とする」という違いを確実に区別してください。この2つを入れ替えたひっかけ問題が非常に多く出題されます。また、復旧を早めるために用意される「ワークアラウンド(回避策)」という用語も併せて覚えておくと効果的です。試験対策では、インシデント管理が「サービスの中断時間を最小限に抑え、迅速に復旧させる(暫定対応やワークアラウンドの適用を含む)」ためのプロセスであることをしっかりと記憶してください。
関連する用語
ITIL、問題管理、ヘルプデスク、サービスデスク、ワークアラウンド、サービス運用